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弁護士への相談事例集

高次脳機能障害の後遺症があるが収入の減少(減収)がない被害者の相談

記事作成日:

【相談内容】

私は、会社員で、交通事故による脳外傷の結果、高次脳機能障害が残り、自賠責保険において9級10号の後遺障害等級が認定されましたが、職場に復帰した後は、事故前と同程度の給料を貰っています。

そのため、加害者が加入する任意保険会社からは「後遺症による逸失利益は認められません」と言われていますが、このまま後遺症逸失利益はゼロとして示談してしまって良いのでしょうか。

【弁護士の見解・回答】

後遺障害別等級の9級10号は「神経系統の機能または精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの」です。「服することができる労務が相当程度に制限されるもの」とは、高次脳機能障害の場合「一般就労を維持できるが、問題解決能力等に障害が残り、作業効率や作業持続力等に問題があるもの」をいうとされています。

損害賠償実務においては、基本的には、認定された後遺障害等級に応じて、いわゆる基準喪失率が規定されており、そのとおりの労働能力喪失があったものとして、後遺症逸失利益が認定されています。9級の場合、基準喪失率は35%なので、例えば、年収が500万円であれば、35%の労働能力喪失の結果、1年当たり175万円分の減収が生じたものとして逸失利益を計算します。

(計算例)症状固定時の年齢が50歳で、年収500万円の男性会社員が、後遺症により労働能力を35%(9級)喪失した場合、就労可能期間は17年(67歳-50歳)
500万円×0.35×13.1661(17年に対応するライプニッツ係数)=23,040,675円

※なぜ17年に対応するライプニッツ係数を乗じるのかというと、本来であれば17年間毎年175万円ずつ減収が生じることになるのに、その17年分をまとめて一括で受け取ることになると、その保険金を運用することによって毎年得られる利息収入分を控除することが公平だからです(中間利息控除)。ライプニッツ係数は、毎年発生する利息に相当する額を差し引いた保険金の額を算出するために使用する係数のことをいいます。

しかし、相談者のように、現実には、後遺障害が残っても減収が生じなかったり、基準喪失率よりも少ない減収しか生じないことも少なくありません。そのような場合でも、「事故の前後を通じて収入に変更がないことが本人において労働能力低下による収入の減少を回復すべく特別の努力をしているなど事故以外の要因に基づくものであって、かかる要因がなければ収入の減少を来たしているものと認められる場合とか、労働能力喪失の程度が軽微であっても、本人が現に従事し又は将来従事すべき職業の性質に照らし、特に昇給、昇任、転職等に際して不利益な取扱を受けるおそれがあるものと認められる場合など、後遺症が被害者にもたらす経済的不利益を肯認するに足りる特段の事情」があれば、後遺症逸失利益が認められると解されています(最判昭和56年12月22日民集35巻9号1350頁)。

そのため、現時点においては減収が生じていなくとも

① 本人の特段の努力(事故前よりも多くの残業をする等)によって、何とか収入を維持している
② 周囲(上司や同僚等)の格別の配慮ないし温情によって、現在のところは収入が維持されているに過ぎない
③ 将来においては、昇進・昇格上や転職時の不利益が見込まれる

というような場合は、そのような事情を勤務先の上司に陳述書で説明して貰う等により立証することで、基準喪失率どおりの後遺症逸失利益の賠償を受けられることがあります。高次脳機能障害の場合、②や③の事情が認められるケースが少なくないところです。

ご相談者についても、②や③の事情があるとしたら、このまま後遺症逸失利益をゼロとして示談をするのではなく、そのような事情を勤務先の上司に陳述書で説明してもらう等により、将来的には事故前の収入を維持できなくなる蓋然性を主張して、後遺症逸失利益を認めてもらうよう交渉すべきでしょう。

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また「弁護士の見解・回答」は、記事作成時の法令に基づきます。 その後に法令が改正されている場合がありますので、御留意ください。

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