弁護士への相談事例集

駐車場内での自動車同士の物損事故における過失割合

記事作成日:

相談内容

当センターの面接相談で、保険会社から提示された駐車場内の事故における過失割合が妥当であるかについて相談を受けました。

相談者は、車を運転して買い物に行き、店舗駐車場内の通路を進行していたところ、前方の車が通路上に停止し、左に曲がりながら後退してきたそうです。相談者は、とっさに自車を停止させると同時にクラクションを鳴らしたのですが、前車の右後角部と自車の左前角部が接触してしまったそうです。

事故後、前車の運転者は、「通路左側の空き駐車区画に駐車しようと思い、停止して左にハンドルを切りながら後退駐車しようとしていました。左後方に気をとられていたので、後方の確認が不十分でした。」と言って謝ってくれたため、相談者は、相談者には過失はないと思ったとのことでした。

ところが、後日、前車の任意保険会社の担当者から連絡があり、相談者に8割の過失があると言ってきたそうです。相談者は、相談者の方が過失が大きいというのは到底納得できないので適正な過失割合を知りたいため、相談にお越しになったとのことでした。

弁護士の見解・回答

実務上過失割合の基準として広く参考にされている別冊判例タイムズ38号「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準(全訂5版)」(東京地裁民事交通訴訟研究会編)の分類では、今回の事故は、駐車場内で「通路を進行する自動車と通路から駐車区画に進入しようとする自動車の事故」の類型となります。

駐車場は駐車のための施設であり,自動車が通路から駐車区画に進入することは、駐車場の設置目的に沿った行動であるため、駐車区画への進入動作は、原則として通路の通行に対して優先されるという価値判断に基づき、別冊判例タイムズ38号は、通路を進行する自動車と通路から駐車区画に進入しようとする自動車の事故の類型の基本過失割合につき、通路進行車8割、駐車区画進入車2割としています。

これは、駐車区画進入車の駐車区画への進入動作が、通路進行車からみて、非常用点滅表示灯(ハザードランプ)、方向指示器又は後退灯の点灯や車両の向き等により、当該駐車区画のある程度手前の位置で客観的に認識しうる状態になっていたことが前提となっています。

今回の事故の場合、通路進行車である相談者からみて、駐車区画進入車である前車の駐車区画への進入動作を駐車区画のある程度手前の位置で客観的に認識しうる状態といえるかどうかが問題となります。

相談者からみて、前車の駐車区画への進入動作を駐車区画のある程度手前の位置で客観的に認識しうる状態ではなかった場合、例えば、前車と相談者の車両の距離が接近した地点から、前車が急に駐車区画への後退を開始した場合や、前車が駐車区画から相当離れた地点まで進行してから後退による進入動作を開始したために、前車がどの駐車区画に進入しようとしているのか相談者が認識できなかったような場合には、この基準の適用はなく、個別具体的な事情をもとに過失割合を検討することとなります。

相談者には、以上のとおり過失割合の考え方を説明し、話し合いで解決できない場合に、当センターの示談あっせんは、物損のみの事故についても利用できる場合があることを助言しました。

 
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当センターの法律相談でよく相談される事例を参考として紹介しています。掲載にあたっては、相談者の秘密に十分に配慮するとともに、わかりやすい内容とするために、事案を加工し、抽象化、一般化、匿名化しています。

また「弁護士の見解・回答」は、記事作成時の法令に基づきます。 その後に法令が改正されている場合がありますので、御留意ください。

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