弁護士への相談事例集

任意保険会社から治療費や通院交通費の支払いを打ち切られた被害者から相談

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相談内容

当センターの面接相談で、治療費の支払を打ち切られた被害者からご相談を受けました。

相談者の方は、家族が運転する乗用車に同乗中、赤信号で停止していたところに後続車両に追突されて、頸椎捻挫(けいついねんざ *むち打ち症)を受傷し、事故当日から整形外科医院に通院していました。通院当初は、加害者が契約していた任意保険会社が整形外科医院に治療費を直接支払ってくれて、通院に要した交通費の精算もしてくれていました。

ところが、事故から2か月後、加害者の任意保険会社は、もう怪我は治っているはずだ、として、整形外科医院に対する治療費の支払いを一方的に打ち切りました。

しかし、相談者は、その時点でも首の痛みなどの症状が残っており、主治医に相談したところ、主治医からも治療継続によって症状が改善する可能性が高いので通院治療を続けた方がいい、と言われたため、その後も1か月間、自分の健康保険を利用して通院を続けました。幸いにも、その後の通院治療によって症状は改善し、事故から3か月後の治療終了時には後遺症は残っていないということでした。

相談者は、治療が終了した段階で、任意保険会社に対して、治療費の支払いを打ち切られた後に自己負担した治療費と通院交通費の合計2万円の支払いを求めましたが、これを拒否されました。

そして、今回、任意保険会社から賠償金の提示がありましたが、提示内容には相談者が負担した治療費と通院交通費は含まれていなかったので、打ち切り後の治療費や通院交通費の請求はできないのかと相談にみえました。

弁護士の見解・回答

相談者が、任意保険会社から提示された損害計算書を持参していましたので、これを確認したところ、任意保険会社の提示内容は、当初の通院2か月分(打ち切り前)の治療費と交通費の合計23万円に、当初の通院2か月の通院日数に応じた自賠責保険基準で計算した慰謝料25万8,000円(日額4,300円×60日)を加算した総額48万8,000円を賠償額として、そこから支払済みの治療費と交通費の合計23万円を控除した25万8,000円を最終的に支払う金額とするものでした。

本件では、任意保険会社による治療費の支払打ち切り前後における受診状況が中断なく継続していること、主治医から治療継続により症状改善の見込みがある旨の助言を受けていたこと、事故から治療終了までの期間は3か月であること、治療費支払打ち切りから1か月後には治療を終了しており後遺症もないこと、等の事情に照らし、事故と治療終了までの治療費と交通費の支出との因果関係が認められる可能性は高いものの、これまでの任意保険会社の態度からすれば、交渉によってすんなりと相談者が負担している治療費と交通費を支払うかどうかは微妙と考えられました。

そこで、相談者には、自賠責保険会社へ被害者請求、すなわち、被害者が、直接、自賠責保険会社に損害賠償請求をすることで、自身が負担した治療費や交通費のほか最終通院までの通院日数に応じた自賠責保険基準での慰謝料の支払いを受けられる可能性があることを説明しました。

また、慰謝料の支払基準については、今回任意保険会社が提示した自賠責保険の基準のほかに、任意保険会社が独自に規定する支払基準(任意保険基準)や、弁護士(裁判)基準と呼ばれる基準があり、弁護士(裁判)基準は、過去の裁判例等を基に裁判で認定される可能性のある基準(裁判基準、弁護士基準)であることを説明しました。

弁護士(裁判)基準では、むち打ち症で他覚所見がないケースで、3か月通院治療した場合の通院慰謝料の目安は53万円です(民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準(赤い本)2023年度版)。

弁護士(裁判)基準は、裁判で認められる可能性のある目安の金額に過ぎず、絶対的なものではありませんし、個別具体的な事情によって金額は変わりますが、自賠責基準よりも高額になる可能性があります。

被害者ご自身で任意保険会社と示談交渉をしても、弁護士(裁判)基準での慰謝料の提示をしてもらうことは困難な場合が多いので、相談者には、支払打ち切り後の治療費、交通費と合わせて、慰謝料の金額についても、当センターの示談あっせんの申立てを検討してはどうかと助言しました。

なお、先に自賠責保険に被害者請求をした上で、弁護士(裁判)基準に不足する慰謝料について示談あっせんを申し立てるということも可能です。

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また「弁護士の見解・回答」は、記事作成時の法令に基づきます。 その後に法令が改正されている場合がありますので、御留意ください。

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