弁護士への相談事例集

交通事故でペットがケガした場合に、慰謝料が認められるかどうか。

記事作成日:

【相談内容】

当センターの面接相談で、物損に関する慰謝料についての相談を受けました。

自動車で愛犬をドッグランに連れて行く際、信号無視の自動車に衝突され、相談者に怪我はなかったのですが、自動車が破損し、愛犬が全治3ヶ月の骨折傷害を負ったそうです。

加害者の保険会社は、車の修理費や愛犬の治療費を払うと言っていますが、修理費や治療費だけでなく、慰謝料までを請求したいと考えているが、認められるだろうかとのことでした。

【弁護士の見解・回答】

自動車事故により、人の生命・身体が侵害されることによる損害を人損(じんそん)といい、物が滅失・破損することによる損害を物損(ぶっそん)といいます。なお、ペットは、法律上は「物」として扱われますので、ペットに生じた治療費等の損害も物損となります。

物損事故の場合、一般に、物の交換価値相当額、修理費用などの財産上の損害が賠償されることにより、同時に精神的苦痛も償われたと考えられることから、別途精神的苦痛に対する慰謝料は認められないというのが多くの裁判例の傾向です。

例外的に物損に関する慰謝料が認められるためには、特段の事情が必要とされており、特段の事情としては、①被害物件が被害者にとって特別の主観的・精神的価値を有し(そのような主観的・精神的価値を有することが社会通念上も相当だと認められることが必要)、単に財産的損害を賠償しただけでは償えないほどの甚大な精神的苦痛を被った場合や、②加害行為が著しく反社会的、あるいは害意を伴うもので、財産に対する賠償では被害者の著しい苦痛が慰謝されないような場合があげられます。

そして、被害物件が車両である場合には、いくら愛着をもって大切にしているとしても、主観的・精神的価値が賠償に値するほどの利益と認められるかというと困難で、慰謝料が認められることはほとんどありません。

ただし、被害車両の損傷に伴い、生活の平穏を害されたり不便を強いられたりするなど人格的利益の毀損が認められる場合には、慰謝料が認められる余地があります。

例えば、市議会議員に立候補した被害者が所有する選挙カーが、加害車両に衝突されて損傷し、選挙運動員が負傷したという事故で、投票日の2日前という選挙活動にとって極めて重要な時期に街宣活動の主要な手段である選挙用自動車を使用しての活動が半日困難となり、代車への対応等のためその他の活動にも支障を来した等の諸事情を勘案し、被害車両の修理代等のてん補によっては償いきれない有形無形の人格的利益の損害が生じたものと認めるべき特段の事情があるとして、慰謝料を認めた裁判例(大阪地判平5.5.13交民26・3・622)があります。

他方、可愛がっていたペットについては、被害者が特別の愛情、愛着を抱いていることは無理からぬことであり、社会通念上も相当と考えられることから、比較的慰謝料が認められやすい傾向があります。

例えば、我が子のように愛情を注いでいたラブラドールレトリバーが受傷し、後肢麻痺、排尿障害の症状が残った例で、飼い主夫婦に合計40万円の慰謝料を認めた裁判例があります(名古屋高判平20.9.30自保ジ1775号20頁)。

相談者のケースでも、具体的な事情によっては、愛犬の傷害について慰謝料が認められる余地があると回答しました。

日弁連交通事故相談センターに相談するメリット

ご相談いただくことで、交通事故の賠償問題について、経験豊富な「弁護士」から「事案に応じた適切なアドバイス」「無料」で受けられます。

一人で悩まないで、ささいなことでもご相談いただくことで、「解決への道筋」が見えてくるはずです。

交通事故にあってしまった時は
まずは、ご相談ください。

・電話相談は10分程度でお願いしております。

・面接相談は30分×5回まで無料です。

当センターの法律相談でよく相談される事例を参考として紹介しています。掲載にあたっては、相談者の秘密に十分に配慮するとともに、わかりやすい内容とするために、事案を加工し、抽象化、一般化、匿名化しています。

また「弁護士の見解・回答」は、記事作成時の法令に基づきます。 その後に法令が改正されている場合がありますので、御留意ください。

-弁護士への相談事例集
-, ,

Copyright© 公益財団法人 日弁連交通事故相談センター , 2025 All Rights Reserved.