相談内容
当センターの面接相談で、保険会社が提示した慰謝料の金額について相談を受けました。
相談者の方は、令和2年12月1日に追突事故に遭い、頸椎捻挫(けいついねんざ)の傷害を負い、事故当日から同3年1月31日まで2か月間、実日数にして10日、整形外科医院に通院したとのことでした。
通院終了後、相談者に対して加害者が加入していた任意保険会社から示談案の提示がされ、傷害に対する慰謝料として1日につき4,300円を20日分、合計86,000円が提示されたとのことで、この慰謝料額に納得して示談すべきかアドバイスを受けたいとのことでした。
弁護士の見解・回答
自賠責保険金には、自動車損害賠償保障法施行令で規定する支払限度額があります。傷害による損害の限度額は、120万円です。
また、自賠責保険金には、支払基準があります(平成13年 金融庁 国土交通省 告示第1号・自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準)。この支払基準では、傷害慰謝料は、1日4,300円で、慰謝料の対象となる日数は、被害者の傷害の態様、実治療日数その他を勘案して、治療期間の範囲内とする、とされています。
今回のご相談で、任意保険会社が相談者に提示した1日につき4,300円という金額は自賠責保険による賠償金の支払基準に定められた1日あたりの慰謝料の金額であり、20日分という日数は、相談者の通院実日数10日を2倍した日数であり、被害者の受傷内容が頚椎捻挫、いわゆるむちうちであること、事故から治療終了までの2か月間に10日通院治療を受けたこと、等の事情からみて、これも自賠責保険による賠償金の支払基準に則った慰謝料の対象となる日数と思われます。
ところで、傷害慰謝料の支払基準には、自賠責保険の支払基準の他に、任意保険会社が内規として定めている任意保険基準や、弁護士(裁判)基準と呼ばれる基準があります(当センター本部が発行する交通事故損害額算定基準(通称「青本」)や民事交通事故訴訟損害賠償算定基準(通称「赤い本」)等の基準があります。
自賠責保険は、自動車事故被害者の迅速、公平な救済のため、ごく基礎的な金額の対人賠償を確保するための強制保険であり、任意保険は、この強制保険だけでは足りない部分を上乗せで補償するほか、強制保険では補償されない対物事故の賠償損害や自動車搭乗中の人のケガなどに対する補償、自動車自体の損害に対する補償など補償範囲を広げるためにわざわざ加入しているわけですから、今回の任意保険会社の慰謝料の提示について、直ちにこれを了承する必要はありません。
面接相談では、以上を説明したうえで、当センターが発行する交通事故損害額算定基準(通称「青本」)や民事交通事故訴訟損害賠償算定基準(通称「赤い本」)等を参照して裁判を起こした場合に認められる可能性のある慰謝料は360,000円程度であることを助言しました。
この金額を参考にして、任意保険会社との間で適切な慰謝料を支払うよう交渉し、相談者自身での交渉が困難である場合には、当センターの示談あっせんの利用を検討するよう助言をしました。