弁護士への相談事例集

交通事故で被害で壊れてしまった携行物等について新品価格が賠償されるケース

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【相談内容】

バイオリニストを目指して高校の音楽科で学んでる学生さんからご相談を受けました。学校から帰る途中、自動車に衝突される事故に遭い、幸い怪我は軽かったのですが、様々な携行物等が駄目になってしまったということでした。具体的には、①著名な作者によるバイオリン、②買って間もないスマートフォン、③掛けていた眼鏡、④着ていた高校の制服、等です。

加害者側の損害保険会社からは「中古品として、購入価格よりも減価した額しか賠償できません」と言われてて、納得できないとのことでした。

【弁護士の見解・回答】

自動車や建物等を含め、交通事故により、物に修理困難な損傷が生じた(全損となった)場合、新品の購入価格が賠償されることは、基本的にありません。事故時における時価(同等の中古品を購入するのに必要な費用)として、大幅に減価した額が損害と認められるにとどまる(いわゆる新旧交換差益の分は賠償されない)のが原則です。

しかし、ご相談のようなケースにおいては、例外的に、そのような減価をしない額が損害と認められることもあることを説明しました。

損害賠償実務上、そのような例外的な取扱がなされることがあるのは、以下のような類型の物です。

①年数が経過しても価値が減少しない物

バイオリン(購入価格700万円)及びバイオリン弓(同200万円)が焼失した事案で、その価格は作者・音質・製作方法等により決まるという性質上、年数の経過により価値が減少するものではないとして、購入価格計900万円を認めた裁判例(名古屋地判平15・4・28交通民集36巻2号574頁)があります。物の性質上そもそも「中古品としての時価」も高いというケースです。なお、安価な普及品のケースで同様に判断されるかは疑問です。

②購入直後の物

事故当月に購入されたばかりのiPhoneにつき、使用による減価は少ないと考えられるとして、購入価格7万2360円を認めた裁判例(大阪高判平30・4・20自保ジャーナル2030号139頁)があります。そのような賠償がなされることが、社会通念(世間の常識、一般人の感度)にも合致するでしょう。

③身体の一部と同視し得る物

眼鏡(購入時期不明)につき、人体の機能を補助する物であることを理由に、事故後の購入価格9万5000円を認めた裁判例(大阪地判令元・12・5自保ジャーナル2064号86頁)があります。もっとも、眼鏡については、(同程度の中古品を購入して使用するということは一般的には困難ですが)生涯にわたって一つのものが使用され続けるのではなく経年による劣化や症状(近視や老眼等)の変化に応じて買い替えられながら使われることが通常であるためか、減価した額のみ認める裁判例の方が多いのが実情です。

④新品に買い換えたことで耐用年数が延びても意味がなく(使用期間が限られている)、かつ同程度の中古品を購入することも容易ではない(中古品市場が形成されていない)物

高校生の制服につき、用途・期間が極めて限定される特殊な性質を理由として、新品購入価格計1万4030円を認めた裁判例(大阪地判令2・6・10交通民集53巻3号630頁)があります。建物に自動車が衝突して損傷したドア(建物が存続する限り使用され続けるはずだったもの)を新しいものに交換せざるを得なかった(ドアについては全損となった)ような場合も、同様と解されます。

以上の観点を示して、加害者側の損害保険会社の担当者と損害賠償金の増額を主張して交渉すること説明し、もしご自身で交渉することが難しければ、当センターの示談あっ旋の利用を検討するようおすすめしました。

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